TikTokは若い世代が娯楽で見る場所で、家づくりのような高額で時間のかかる検討には合わない——。住宅会社でTikTokの話題になると、こうした見方が出てくることがあります。一方で、TikTokで扱われる内容は娯楽だけに限られません。取り組むべきか、今は見送るべきか、判断がつかないまま止まっているという状況もあります。
迷いが生まれやすいのは、TikTokを「やるか・やらないか」だけで考えているからかもしれません。実際には、自社の商圏や体制、集客の中で担わせたい役割によって、向き不向きの答えは変わります。媒体の特徴を知らないまま流行だけで始めると、自社に合う運用か判断しにくく、逆に「若者向け」という印象だけで見送ると、自社との相性を十分に確認しないまま判断することになります。
この記事では、工務店・住宅会社がTikTokに取り組むかを判断するために、媒体の特徴・向き不向きの判断軸・リールやYouTubeショートとの違い・集客の中での位置づけを整理します。
この記事の要点
- TikTokは、フォロー関係に限らず興味・関心に応じた動画が表示されるため、まだ会社を知らない人との接点になることがある
- 向き不向きは一律には決まらない。商圏・体制・担わせたい役割・伝えたい内容との相性という判断軸で考える
- リール・YouTubeショートとは優劣ではなく発見のされ方・見られ方・展開のしやすさが違う。使い分け・展開で捉える
- TikTok単体で問い合わせまで完結するとは限らない。発見の入口として、次の一歩へつなぐ設計とあわせて考える
TikTokはどんな媒体か|「発見」のされ方が特徴
TikTokは、短い動画が中心のサービスです。判断の前提として、どんな見られ方をする媒体かを整理しておくと、自社に合うかを考えやすくなります。細かな仕様は変わることがあるため、ここでは大きな特徴に絞ります。
特徴の一つは、フォローしていないアカウントの動画も推薦・表示されるという点です。TikTokの「For You」では、視聴・反応・検索などの行動をもとに、ユーザーごとに異なる動画が推薦されます。そのため、フォローしていないアカウントの動画に触れることもあります。
住宅会社にとっては、すでに自社を知っている人だけでなく、まだ会社を知らない人との接点になる可能性がある点が特徴の一つです。この「発見」のされ方が、他の媒体と比べたときの分かりやすい違いです。
もう一つは、視聴のされ方です。TikTokでは、For Youで流れてくる動画から偶然情報に触れることもあれば、検索から知りたい内容を探すこともあります。住宅会社が活用する場合も、推薦による発見だけでなく、動画内のテーマや言葉が検索時の接点になる可能性も考えておきます。
短い動画では、冒頭で何についての動画なのかが分かるようにしておくと、内容を判断してもらいやすくなります。家づくりを具体的に検討して検索している人だけでなく、関連する暮らし・住宅の動画を見ている人の画面に表示されることもあります。ただし、その場で問い合わせにつながるとは限りません。
工務店・住宅会社にTikTokは向いているか|判断軸で考える
「住宅会社にTikTokは向いているか」という問いに、すべての会社に当てはまる一つの答えはありません。向いているかどうかは、自社の状況とTikTokの特徴が合うかで変わります。ここでは、判断の材料になる軸を整理します。
| 判断軸 | 相性を確認する視点 |
|---|---|
| 担わせたい役割 | まだ会社を知らない人との接点を増やしたいのか、検討中の人に詳しい情報を届けたいのか。TikTokにどこまでの役割を持たせるかを整理する |
| 商圏との関係 | 投稿の表示範囲を自社の商圏だけに限定できるとは限らない。地域密着で商圏が狭い場合は、動画が見られる範囲と実際の対応エリアが一致しないことも想定する |
| 続けられる体制 | 撮影・確認・投稿を継続できる体制があるか。誰が担うかを無理のない範囲で決められるか |
| 伝えたい内容との相性 | 短い尺で伝えやすい題材があるか。じっくり説明が要る内容は、別の媒体や長い動画のほうが向く場合がある |
| 他媒体との重なり | すでにInstagramやYouTubeで動画を扱っているか。すでに縦型動画の素材がある場合は、TikTokでも活用できるかを検討しやすい |
これらの軸を見て、発見の接点を広げたい・短い動画で伝えられる題材がある・続けられる体制を用意できるという条件が重なるほど、TikTokは選択肢に入りやすくなります。一方で、対応エリアが限られている、動画制作の体制を確保しにくい、現在は別の施策を優先したいといった場合は、TikTokを見送る判断も考えられます。
ここで注意したいのは、「若者向けだから住宅に向かない」と一括りにしないことです。TikTokは若年層だけが利用する媒体とは言い切れません。年代の印象だけで住宅会社との相性を判断せず、自社の商圏・発信内容・運用体制をあわせて確認します。同時に、「流行しているから」という理由だけで始めるのではなく、自社の目的や運用体制に合うかを確認します。
リール・YouTubeショートと何が違うのか
TikTokを検討するとき、「Instagramのリールや、YouTubeのショートと何が違うのか」「別で取り組む意味があるのか」は迷いやすい点です。いずれも短い縦型の動画という点は共通していますが、どこが違うかを優劣ではなく、発見のされ方・見られ方・展開のしやすさで捉えると、使い分けを考えやすくなります。
| 観点 | 捉え方(傾向) |
|---|---|
| 発見のされ方 | TikTok・リール・YouTubeショートはいずれも、フォロー外・登録外のユーザーに表示されることがある。TikTokはFor You、Instagramはリールや発見面、YouTubeはショートフィード・検索・関連動画など、発見される場所や周辺の機能が異なる |
| 見に来る人の文脈 | 各媒体ともおすすめ表示・検索・プロフィール/チャンネルなど複数の経路がある。TikTokではFor Youと検索、Instagramではプロフィールや他の投稿、YouTubeではチャンネル・長尺動画・検索など、動画の前後に確認できる情報が異なる |
| 次に確認できる場所 | プロフィール・リンク・Webサイト・他の動画など、動画を見たあとに確認できる情報や移動先が媒体ごとに異なる |
| 展開のしやすさ | 縦型・短尺という共通点があるため、同じ撮影素材を複数媒体で活用する方法がある。ただし、冒頭の見せ方・テロップ・尺・説明文などは各媒体に合わせて調整する |
縦型・短尺という共通点があるため、同じ撮影素材を複数媒体で活用する方法があります。ただし、冒頭の見せ方・テロップ・尺・説明文などは、各媒体の表示や視聴状況に合わせて調整します。どれか一つに絞る必要も、すべてに同時に取り組む必要もなく、自社の体制に合わせて範囲を決めます。
住宅会社がTikTokで扱いやすい内容の方向性
取り組むと決めた場合、次に迷うのは「どんな内容を出すか」です。ここでは具体的な撮影手順ではなく、住宅会社が短い動画で扱いやすい題材の方向性を整理します。
短い尺で見られる媒体では、一つの動画で扱うテーマを絞り、何についての内容なのかが早い段階で分かる形にすると整理しやすくなります。たとえば次のような方向性が考えられます。自社が伝えやすいもの、続けやすいものから選びます。
- 実際の空間が見える内容:間取りや収納、素材の質感など、写真だけでは伝わりにくい部分を短く見せる
- 家づくりの疑問に答える内容:費用の考え方や進め方など、自社の相談・見学会で質問を受けるテーマを短くまとめる
- 暮らしの工夫が伝わる内容:家事動線・収納・採光など、設計時に考えている工夫を一つに絞って見せる
- つくり手が見える内容:どんな考えで家をつくっているか、誰がつくっているかが伝わる場面
施工中の様子や施主邸を扱う場合は、撮影・掲載の許可と公開範囲を事前に確認することが前提になります。施主邸・施工中の現場・人物などを扱う場合は、写真・動画・住宅情報などについて、利用目的と公開範囲を伝え、本人の了承を得たうえで掲載します。この確認は、どの媒体で発信する場合でも共通して整えておく点です。
また、短い動画で扱いきれない内容を無理に詰め込む必要はありません。詳しく伝えたい題材は、YouTubeの長尺動画やWeb記事など、より多くの情報を載せられる形式へ分けるという分け方も、続けやすさにつながります。
検討プロセスの中でのTikTokの位置づけ
TikTokは、フォロー関係に限らず動画が表示される特徴から、まだ自社を知らない人が動画に触れる接点になることがあります。ただし、これを「TikTok=認知だけの媒体」と固定してしまうのは早計です。動画を見た人がプロフィールやリンクをたどり、Webサイトや他の投稿を確認することもあり、その先の段階に関わることもあります。
住宅の検討は、一度動画を見てすぐ問い合わせる、という直線的な流れになるとは限りません。複数の会社や情報源を行き来しながら、時間をかけて絞り込んでいく動き方があります。この動き方は住宅購入者の検討プロセスで整理しています。
TikTokはその入口の一つになりうる媒体で、動画に触れたあと、プロフィール・Webサイト・他のコンテンツなど、さらに情報を確認できる場所もあわせて用意しておくと、集客全体の中で位置づけを整理しやすくなります。
つまり、TikTok上の再生数やフォロワー数だけで判断するのではなく、動画を見た人がプロフィールやWebサイト、相談窓口へ進める状態になっているかまでを含めて捉えます。Webサイトへの遷移や問い合わせなど、自社が設定した目的に関係する行動も確認します。
取り組む前に整理しておきたいこと
TikTokに取り組む場合は、始める前に目的・体制・他媒体との関係を整理しておきます。少人数で運用する場合も想定して、負担を抑えられる範囲で決めます。
- 担わせたい役割:発見の接点を広げたいのか、他媒体の補完なのかを決めておく
- 運用体制:誰が企画・撮影・確認・投稿を担うか。自社で継続できる運用方法を決める
- 他媒体との展開:撮った動画をリールやショートへ展開するか、TikTokに絞るか
- 次の一歩の置き場所:動画から進めるプロフィール・リンク・Webサイトを用意しておく
- 許可と公開範囲:施工中や施主邸を扱う場合の掲載許可と、公開してよい範囲を確認する
- 見直しの目安:あらかじめ振り返るタイミングを決め、担わせた役割に照らして継続・調整・停止を検討する
再生数・フォロワー数などTikTok上の数字だけでは、自社が設定した目的にどこまでつながっているかは分かりません。再生・プロフィール閲覧・Webサイトへの遷移など、設定した目的に応じて見る項目を決めます。何を見るかは、始める前に決めておくと振り返りやすくなります。
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よくある質問
Q. TikTokは若い世代向けで、住宅の集客には向かないのでは?
A. 年代だけで向き不向きは決まりません。TikTokは若年層だけが利用する媒体とは言い切れません。年代だけで住宅会社との相性を判断するのではなく、自社の商圏・発信内容・運用体制をあわせて確認します。一方で、商圏がごく狭い場合や、今すぐ相談したい人への比較材料を優先したい段階では、他の媒体を先に整えるほうが合うこともあります。自社の目的と体制に照らして判断するのがおすすめです。
Q. フォロワーがいない状態から始めても意味はありますか?
A. TikTokのFor Youでは、フォローしていないアカウントの動画も推薦されるため、フォロワーが少ない段階でも、会社を知らない人の画面に動画が届くことがあります。ただし、表示のされ方や見られ方は状況によって変わり、始めてすぐに反応がまとまって表れるとは限りません。数字だけを急がず、続けられる範囲で取り組む前提で考えると整理しやすくなります。
Q. Instagramのリールをやっていれば、TikTokは不要ですか?
A. どちらも短い縦型動画ですが、発見のされ方や見に来る人の文脈が異なります。リールはアカウント全体の印象と結びつきやすく、TikTokはFor Youでフォロー外の動画にも触れられます。両方に取り組む必要も、どれか一つに絞る必要もありません。撮った動画を複数媒体へ展開しやすいため、自社の体制に合わせて範囲を決めるのが現実的です。
Q. TikTokから直接、問い合わせや来場につながりますか?
A. 動画を見てその場で問い合わせるとは限りません。住宅の検討は複数の情報源を行き来しながら進むこともあり、TikTokでは、For Youや検索などを通じて、自社を知らない人が動画に触れることもあります。動画を見たあとに、プロフィール・Webサイト・相談窓口など、さらに情報を確認できる場所を用意しておきます。TikTok単体で成果を判断せず、導線とあわせて考えるのがおすすめです。
まとめ
工務店・住宅会社にTikTokが向いているかは、一律には決まりません。担わせたい役割・商圏・運用体制・伝えたい内容との相性を確認し、自社にとって採用する理由があるかを判断します。「若者向けだから不向き」とも、「流行しているから必要」とも決めつけず、自社の状況に照らして判断します。
TikTokでは、For Youによる推薦や検索などを通じて、フォローしていないアカウントの動画にも触れられます。リールやYouTubeショートとは、動画が表示される場所や、動画を見たあとに確認できる情報・機能が異なります。TikTok単体で問い合わせまで完結すると考えず、動画を見たあとにプロフィール・Webサイト・他のコンテンツなど、さらに情報を確認できる場所もあわせて用意します。TikTokを他の接点とどう組み合わせるかまで整理しておくと、集客施策の中での位置づけが明確になります。仕様は変わることがあるため、機能や表示の仕組みは最新の公式情報を確認してください。
TikTokは、やるか・やらないかで決める前に、自社の目的と体制に合うかを判断軸で確かめる媒体です。取り組む場合は、動画を見てもらうことだけでなく、その後にどの情報を確認してもらうかまで含めて位置づけます。
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